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RSウイルス感染症

RSウイルス感染症とは

RSウイルス感染症とは、RSウイルスの感染による呼吸器の感染症です。何度も感染と発病を繰り返し、生後1歳までに半数以上が、2歳までにほぼ100%の乳幼児が感染するとされています。9月頃から流行し、初春まで続くとされてきましたが、近年では夏季より流行が始まるようになってきています。非常に感染力が強く、幼稚園や保育園などの施設内感染に注意が必要です。

RSウイルス感染症の特徴

  • 9月頃から流行し初春まで続くが、近年では夏季より流行が始まる。
  • 非常に感染力が強い。
  • 何度も感染と発病を繰り返す。

症状

発熱、鼻水などの症状が数日続きます。多くは軽症で済みますが、細気管支炎、肺炎へと進展することがあり注意が必要です。
潜伏期間は2~8日、典型的には4~6日です。初めて感染する乳幼児の約7割は、数日のうちに軽快しますが、約3割は咳が悪化し、喘鳴、呼吸困難症状などが出現します。早産児や生後24ヶ月以下で心臓や肺に基礎疾患がある、神経・筋疾患や免疫不全の基礎疾患を有する感染者の場合、重症化するリスクが高まります。
重篤な合併症として注意すべきものには、無呼吸発作、急性脳症等もあります。

成人の感染にも注意!

成人がRSウイルスに感染した場合、かぜのような症状であることが多いことから、RSウイルス感染者であると気付かないことがあります。したがって、咳等の呼吸器症状がある場合は、可能な限り0歳~1歳児との接触を避けることが乳幼児の発症予防に繋がります。
また、RSウイルスに感染した乳幼児を看護する保護者や医療スタッフがRSウイルスに感染した場合、一度に大量のウイルスに曝露されるため重症化することもあります。
RSウイルスは高齢者においても重症の下気道炎を起こす原因となることが知られており、特に介護施設内などでの集団発生が問題となる場合があります。

治療法

RSウイルスに対して効果が認められた抗ウイルス薬は、現在のところなく、基本的には対症療法を行ないます。哺乳量・水分摂取量が減っている場合は輸液や胃チューブを使用した経管栄養を、酸素吸入を、呼吸困難がひどい場合は人工呼吸器による治療を行ないます。
鼻水や痰など、分泌物が多い感染症なので、症状改善や中耳炎の予防のために、分泌物を吸引したり排泄を促すことが重要です。

感染症の診断

現在、ほとんどの病院が診断に「迅速診断キット」を使用しています。鼻水を綿棒でとり、キットを用いて陽性か陰性かを判断します。この検査が保険診療として認められているのは、「1歳未満の乳児・入院中の患者・パリビズマブ製剤が処方される患者」に限られているため、それ以外の場合は原則的に検査できません。

パリビズマブ製剤とは

日本ではシナジスという注射液があります。ワクチンではありません。注射薬です。
特に、早く生まれた低出生体重児や心臓に病気を持っている子ども、一部のダウン症の子ども、免疫不全の子どもの場合は重症化するので、予防が大切です。予防のためには、パリビズマブ(シナジス)という薬が使われています。パリビズマブ(シナジス)は、RSウイルス粒子表面のあるタンパク質を特異的に結合する免疫グロブリンで非常に高価な薬です。

1回投与量(mg)=体重(kg)×15mg/kg

3kgの赤ちゃんで使うと1回約8万円弱になります。RSウイルス感染の流行期の前に、1ヶ月毎に主に5回筋肉に注射します。ただし、流行期が長期にわたる場合は、5回以上使用されることがあります。

パリビズマブの具体的な対象(添付文書より)

パリビズマブの具体的な対象は、

  • 在胎期間28週以下の早産で,12ヵ月齢以下の新生児および乳児
  • 在胎期間29週~35週の早産で,6ヵ月齢以下の新生児および乳児
  • 過去6ヵ月以内に気管支肺異形成症(BPD)の治療を受けた24ヵ月齢以下の新生児,乳児および幼児
  • 24ヵ月齢以下の血行動態に異常のある先天性心疾患(CHD)の新生児,乳児および幼児
  • 24ヵ月齢以下の免疫不全を伴う新生児,乳児および幼児
  • 24ヵ月齢以下のダウン症候群の新生児,乳児および幼児

です。
2歳を過ぎると、重症化の危険性が下がるので、予防の対象にならなくなります。

予防方法

感染力は強いですが、感染経路としては接触感染・飛沫感染です。マスクでの予防はもちろんのこと、手洗いとうがいの徹底、ドアノブなど患者が触れる所の清掃・除菌、人混みを避けるなどの予防が必要となってきます。

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